未来の「ヨーロッパの大学」を創造することを目的として、Erasmus+(エラスムス・プラス)プログラムの公募枠に基づいて、65の「欧州大学アライアンス」が2019年から2024年に選定されました。
欧州大学イニシアチブ(European Universities Initiative)
欧州大学アライアンス創設プロジェクトは、2017年9月26日にソルボンヌ大学で行われたエマニュエル・マクロン大統領の演説に端を発しています。演説の中でマクロン大統領は、「複数のヨーロッパ諸国の大学がネットワークを形成し、各学生が海外で学び、少なくとも二言語で授業を受けるカリキュラムを提供する『欧州大学』を創設する」ことを提案しました。
この構想を受けて、欧州委員会は2019年、2020年、2022年、2023年、2024年に公募を実施し、合計で65のアライアンス、570の欧州の教育機関(うちフランスの教育機関64校)を選定しました。フランスは参加教育機関数(64校)でドイツ(67校)に次ぐ2位となっており、3位はスペイン(56校)です。
このイニシアチブは、Erasmus+ 2021-2027プログラムの一環として実施されており、2021-2027年のプログラム期間において、アライアンス構築を支援するために過去最大となる11億ユーロが割り当てられています。これらのアライアンスは、最終的に欧州高等教育の質と競争力の強化を目指しています。
さらに、2024年の最新公募と並行して、「FOREU4ALL」というプロジェクトも選定されました。このプロジェクトの目的は、アライアンス間でのベストプラクティスの共有を促進するコミュニティ・オブ・プラクティスを設立し、アライアンスを超えたシナジーを強化することです。このプロジェクトには、全ての欧州アライアンスが参加しています。
"欧州大学”とは?
欧州大学とは、EU加盟国およびErasmus+プログラム参加国(2023年の公募以降は西バルカン諸国全体も含む)に所在する超国家的アライアンスで、平均して8〜9の大学が参加しています。ボローニャ・プロセス加盟国(イギリスやウクライナなど)も、2022年以降プロジェクトに参加可能となっています。
これらのアライアンスの目的は、卓越した共通の教育・研究戦略を通じて「未来の大学」を創造することであり、具体的には以下を通じて実現されます:
- ベストプラクティスの共有や学際的アプローチにより実現する革新的な教育方法
- 多言語主義、欧州の価値観やアイデンティティの促進
- 社会への開かれた姿勢によって現代の大きな課題に対応
プロジェクト選定のために、いくつかの基準が定められています:
- 学生の少なくとも50%が参加できる学際的キャンパスの構築
- 学生中心の教育方法の活用により、学習課題型教育(challenge-based learning)に基づく学際的授業の枠組みで、個別化された学習経路を形成できること
- アライアンスの地理的バランス
- 持続可能性戦略の策定
2つの重要なテーマ:ヨーロッパ共通の学位制度と法的枠組み
欧州委員会は2022年に「大学に関する欧州戦略」を発表し、高等教育分野において真にヨーロッパ的な次元を発展させることを目指しています。
この戦略に基づき、欧州委員会は高等教育分野での欧州レベルの政策実験を行うための公募を開始しました。
総額200万ユーロの予算が確保され、欧州大学(European Universities)に対して以下の2つの分野で支援が行われました。
- 共通基準の検討 ― 共通の学位授与を容易にする「欧州ラベル(European label)」の創設につながる可能性のある基準を模索すること。
- アライアンスのための法的地位など、制度化された協力ツールの実現可能性の検討。
これら2つの課題をテーマとする1年間のプロジェクトが2023年1月に10件立ち上げられました。
そのうち6件は「欧州学位ラベル」の導入に焦点を当てています。このラベルは、欧州大学アライアンスの枠組みのもとで共同プログラムを修了した学生に授与される学位に付随する補足証明書となる予定です。
このラベルの創設は、学生の流動性を促進する共通の「欧州学位」導入への第一歩であり、複数の大学・複数言語で構成される学際的な共同プログラムを通じて修得された能力を反映することを目的としています。
残りの4件のプロジェクトは、欧州大学アライアンスが共通の「欧州法的地位(European legal status)」を確立することを目的としています。
この法的地位の目的は、アライアンスが共同で行動し、戦略的意思決定を共有し、共同カリキュラムや共同採用を試行し、人材・技術・データ・教育・研究・イノベーションなどの資源を共有できるようにすることです。
これらの1年間の試験的プロジェクトは、各国・地域・機関レベルの関係当局と協力しながら、アライアンスに対する提案を策定しました。
欧州委員会が作成した10件のプロジェクトリポートはこちら